知夏
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ご質問ありがとうございます。一般的に、パワーMOSやIGBTの単体デバイスにおいて、プラスチック製パッケージ表面で測定する温度上昇は、どの程度まで許容されるのでしょうか?データシートに記載されているTc=100℃という条件で示された電流値は、パッケージ表面温度が最大100℃まで到達しても問題ないということを意味しているのでしょうか?ここでいうTcは、金属のバックプレートではなく、プラスチック製のパッケージ表面温度を指しているのでしょうか?
また、TUVやSGSなどの試験機関が製品の温度上昇試験を行い、規定範囲内に収まっていることを確認する場合、パワー半導体デバイスのプラスチックパッケージ表面温度は、何℃以下であることが要求されるのでしょうか?
ABC
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これは非常に古典的で、よく混同される工学上の問題です。簡潔かつ明確にお答えします:パワーデバイスのデータシートにおいて、$T_c$(ケース温度)とは通常プラスチック外装のことを指すのではなく、金属バックプレート(放熱基板)の温度を意味します。
熱設計や認証試験を行う際に自信を持って対応できるよう、以下の核心概念を分解して解説します:
1. T_c とは具体的にどこか?
トランジスタやダイオードなどのパワーデバイス(TO-220、TO-247 等のパッケージ)における定義では、
- T_c (Case Temperature):厳密には半導体チップ(Die)に最も近いパッケージ表面の温度を指します。金属バックプレート付きデバイスの場合、これは金属バックプレートの中心点の温度となります。
- なぜプラスチック外殻ではないのか?
プラスチックは熱伝導率が非常に低く、熱抵抗が大きいため、プラスチック外殻で測定された温度は内部のシリコンチップの実際の発熱状態を正確に反映できません。実際の熱は主に金属バックプレートを通じてヒートシンクへと放熱されるため、T_c の測定ポイントも金属部に設定されています。
2. データシートの T_c = 100^\\circ\\text{C} は何を意味するか?
「$I_d = 20\text{A} @ T_c = 100^\circ\text{C}$」と記載されている場合、その意味は次の通りです。
- 前提条件:強力な放熱手段により、このデバイスの金属バックプレートの温度が 100^\\circ\\text{C} に維持できていること。
- 結論:この条件下で、デバイスが連続的に流せる最大電流は 20\\text{A} である。
- 本質:これは 電流のディレーティング(Derating) の基準値です。つまり、T_c = 100^\\circ\\text{C} のとき、内部の接合部温度 T_j がその上限値(通常 150^\\circ\\text{C} や $175^\circ\text{C}$)に達していることを意味します。
注意:もしプラスチック外殻の温度がすでに 100^\\circ\\text{C} に達している場合、金属バックプレートおよび内部の接合部温度 T_j はさらに高く、危険なレベルに達している可能性があります。プラスチック外殻と金属バックプレートとの間には温度差があるためです。
3. TUV/SGS などの試験機関における温度上昇の制限
安全規格認証(IEC 62368、IEC 60335 など)の試験では、パワーデバイスの温度評価について以下のような判断基準が用いられます。
A. デバイスの定格値($T_j$)を超えないこと
試験機関が最も重視するのは接合部温度 T_j です。実際に T_c を測定(通常はヒートシンクとデバイスの接触面に熱電対を挿入)し、データシートに記載された熱抵抗 R_{\\theta jc} を使って T_j を推定します。
- 判定基準:計算された T_j がデータシートの最大接合部温度未満であること。多くの場合、10~20%のマージンを確保することが求められます。
B. プラスチック外装の材質耐熱限界
プラスチック外装表面の直接測定については、RTI(Relative Thermal Index) という材料の長期耐熱性能指標が参照されます。
- 限界値:一般的なパワーデバイスの封止材(エポキシ樹脂)の長期使用温度は約 120^\\circ\\text{C} \\sim 150^\\circ\\text{C}。
- 経験則:周囲温度 25^\\circ\\text{C} の条件下で、プラスチック外装の測定温度が 110^\\circ\\text{C} \\sim 120^\\circ\\text{C} を超えると、安全規格エンジニアはリスク要因として扱う傾向があります。
4. まとめとアドバイス
| 測定ポイント |
推奨される工学的上限値 |
備考 |
| 接合部温度 (T_j) |
\lt 125^\\circ\\text{C} (最大 150^\\circ\\text{C} 定格の場合) |
寿命と信頼性を確保するためのゴールデンルール |
| 金属バックプレート (T_c) |
\lt 90^\\circ\\text{C} \\sim 100^\\circ\\text{C} |
データシートの性能保証ポイント |
| プラスチック外装 (T_s) |
\lt 100^\\circ\\text{C} |
プラスチックの劣化・脆化防止および火傷リスク回避 |
実用的なテクニック:
デバッグ中にプラスチック外装の温度しか測れない場合でも、常に以下の関係を意識してください:
T_j \gt T_{metal\\_back} \gt T_{plastic\\_surface}
もしプラスチック外装が 100^\\circ\\text{C} に達しているなら、内部の接合部温度はすでに危険域に近づいている可能性が高いです。設計上は、プラスチック外装の実測温度上昇を 80^\\circ\\text{C} \\sim 90^\\circ\\text{C} 以下に抑えることがより安全です。
CCC
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これは非常に混乱しやすい点であり、まったく理解できます!パワーエレクトロニクスのデータシートにおける「ケース温度」と「温度制限」の定義は、よく頭痛の原因になることで知られています。
まず最初にご質問への答えを明確にしておきましょう:いいえ、$T_c$(ケース温度)は一般的にプラスチック製外装の上面を指すものではありません。標準的なパワーデバイスでは、金属製の背面プレートを指します。
以下に、これらの温度がどのように機能するか、データシートの記載内容の意味、および試験機関がどのように評価するかについて、分かりやすく解説します。
1. $T_c$(ケース温度)とは何か?
TO-220、TO-247、D2PAKなどの標準的なディスクリートパワーパッケージにおいて、「ケース」という用語は、ヒートシンクへ熱を伝達するマウント面を厳密に指しています。
- 非絶縁パッケージの場合:T_c は金属製背面プレートの温度を指します。これはシリコンダイ(接合部)で発生した熱を外部へ逃がす主な熱経路です。
- 絶縁パッケージの場合(例:TO-220F):外側全体がプラスチックで覆われています。この特定の場合、T_c は基板から離れた上面ではなく、ヒートシンクに接触する背面のプラスチック表面を指します。
もし、あなたが簡単にサーマルカメラを向けることのできる、またはサーモカップルをテープで貼ることができる上部のプラスチック外装の温度を測定している場合、それは実際には T_c ではなく、$T_t$(トップ温度)を測定していることになります。
2. データシートにおける T_c = 100°C の意味
データシートで連続ドレイン電流(例:$I_{D}$)が T_c = 100°C で規定されている場合、これは絶対最大定格ではなく、あくまで条件付きの定格値です。
つまり次のような意味になります:
「ヒートシンクの性能が十分に高く、金属製背面プレートの温度を正確に100°Cに保てるならば、内部のシリコン接合部温度($T_j$)がその絶対最大定格(通常は150°Cまたは175°C)を超えることなく、デバイスはこの電流を連続的に流すことができる」
実際の使用環境では、金属製背面プレートの温度が100°Cに達したり、それを超えたりすることも全く問題ありません。ただし、その際には内部の接合部温度($T_j$)が最大許容値以下であることが条件となります。
3. TUV / SGS 試験:プラスチック外装の許容最大温度
TUV、SGS、ULなどの安全規格試験機関がお客様の製品を評価する際(通常はIEC 62368-1やIEC 60601-1などの規格に基づいて)、内部部品の温度に関して注目するのは主に以下の2点です:材料の安全性とメーカー仕様の遵守。
彼らは「プラスチック外装」に対して一律の温度上限を持っているわけではありません。むしろ、温度制限は以下の要素によって決まります:
- **部品の絶対最大接合部温度($T_{j(\max)})**:試験機関はケースまたは背面プラスチックの温度を測定し、熱特性パラメータ(例:\Psi_{JT}$:接合部からトップへの熱特性パラメータ)を使って内部の接合部温度を算出します。この T_j がデータシートの最大値(例:150°C)を超える場合、試験は不合格になります。
- プラスチックの相対耐熱指数(RTI):MOSFET/IGBTの黒色エポキシ封止材は、UL認証されたRTI(Relative Thermal Index)を持っており、これはプラスチックが長期間劣化せずに耐えられる最高温度を示します。ほとんどのパワーデバイスでは、封止材のRTIは130°C~150°Cです。正常動作時において、プラスチック外装の温度はこのRTIを超えてはなりません。
- 触れる可能性のある部分の温度制限:デバイスのプラスチック外装が最終ユーザーが触れることのできる位置にある場合、厳しい触れる温度の上限が適用されます(例:メンテナンス時に一時的に触れる可能性のある内部部品では85°C、筐体外表面ではそれより低い値)。純粋に内部にあり、触れる可能性がない場合は、この触れる温度の制限は適用されず、代わりにRTI/$T_j$の制限が適用されます。
実務的な観点から言えば:
スイッチング電源内で動作中のTO-247の上部プラスチック外装の温度を測定して115°Cという値が出た場合、内部の接合部温度はおそらく125°C~135°C程度(消費電力による)でしょう。このとき、封止材のRTIが$\geq$130°Cに認定されており、かつダイの$T_{j(\max)}$が150°C以上であれば、ほとんどの試験機関はこれを合格とします。